御曹司の秘書さんの日常◆

武はとりあえずキッチンの方へ進む。

カウンターの上にポンと放置された袋。
何気なく目をやると、
そこには、パンが入っていた。

「ちょっと。聞いてるの??」

レイナが不意に目の前に立ちはだかる。

「…なんでしょう?」

「だからっ。昴さんって好き嫌いってあるの???」

「…さぁ。覚えはありません。」

「そっ。わかったわ。」

レイナはすたすたと武の前を過ぎて
勝手に冷蔵庫を開ける。

「ちょっと。何も入ってないじゃないっ
 私が、作ってあげようと思ったのにっ」

どうやら、色気作戦から手料理作戦に変更するらしい。
冷蔵庫を開け放ち、なにやらつぶやいている。

「ねぇ。市川っ
 ちょっと、何か買ってきてよっ」

はぁ?何言ってるんだこのお嬢様は。
なんで、俺がこいつの言うことを聞かないといけないんだよ。


「・・・・もうしわけーー」

「お前バカか?」

武の声を遮る様に、昴の冷たい声が響いた。

「あらっ。昴さん!!」

昴はまだほんのり濡れいている髪の毛を
タオルで拭きながら、
レイナをにらむ。
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