御曹司の秘書さんの日常◆
少し考えてから、
「じゃぁ、好きに呼んで。」
あきらめた様にひらひらと手を払った。
「…では、昴様。」
武は、語尾を強めて武は若い上司の名を呼んだ。
ナイス嫌がらせだな。と昴は楽しそうに笑った。
「--こちらが、総務部で~~」
「こちらが、営業部、経営対策室~」
秘書課の武が昴を案内しているものだから
勘のいいヤツは新しい常務だとわかったかもしれないな。
もしかしたら、あまりにも若いから
お客様だと思ったかもしれない。
「…昴様、社長室へは・・・」
「行かない。」
言い切らないうちに言葉を切られた。
…仲は良くないのか。
現在この会社は
昴のすぐ上の兄、樹が社長を勤めている。
どことなく漂う華やかなオーラと
力強い綺麗な瞳は 兄弟だなと思わせる。
何事も穏やかで対応する
かつての上司を思い出した武は、
なぜ兄弟仲が悪いのか疑問だった。
どちらかといえば、弟思いで
外国から帰国し、この会社に入る弟を気遣っていた。
「別に、仲が悪いわけじゃないからな。」
むしろ、うっとうしいんだよ。と言いながら、あははと笑う。