御曹司の秘書さんの日常◆
無言で昴の後を歩く武に言った。
「…すいません。そういうつもりでは…」
「あはは。武っておもしれーな。
ポーカーフェイスぶってるけど… 結構気性荒いじゃん?」
昴は、振りかえって武の顔を覗き込んだ。
ーーやはり兄弟だな。
かつて、昴の兄である樹からも、同じようなことを言われた。
「--では昴様。
今日の業務はこの辺で…
明日の朝礼で就任の挨拶と…」
先ほどの常務室まで戻り、明日の仕事の報告。
昴は、自分の机の上に座りつまらなさそうに聞いている。
「そして、夜には○○ホテルにてお披露目をかねたパーティーが…」
昴は、ふわぁぁと大あくび。
武はパタンと手帳を閉じて昴をにらんだ。
「…昴様。今は仕事中です。
いい加減な気持ちで常務の役職に付いたのなら
今すぐ退職して下さい。」
冷たい視線が昴に注がれる。
昴は、驚いて目を見開いたが、
すぐに机から降りて武の前に立つ。
「なにか…?」
やばい。言い過ぎたか?
武は少し身をそらす。
ふわっ。
一瞬何が起きたか武は理解できなかった。
昴は、ぎゅっと武を抱きしめたのだ。