御曹司の秘書さんの日常◆
あれから、昴は呆然と社長を見送った後、
武に向き直って、珍しく笑いもせず。
「武。申し訳ない。」
とだけつぶやいた。
「…昴さま。いかがなさるおつもりでしょうか?」
「--んーーまぁ。
大丈夫。どうにかなるよ?」
いつもの軽い調子で、ニヤリと笑った。
その笑顔が武の神経を逆なでする。
「--!」
「市川。すぐに10時から会議だろう?
早くいくぞ。」
一言、文句を言おうと武が息を吸った瞬間、
昴は素早く仕事モードに切り替わって、
武に指示を出した。
「・・・・ちっ・・・」
武は小さく舌打ちをする。
確かに、こんなことで言い争っている時間はない。
こう見えても、常務の昴のスケジュールは今日も埋まっている。
「…昴様。会議の前に、この書類に目を通してーーー」
いろいろ言いたいことをかみ殺して、
武は通常業務に専念することにした。
あー。むしゃくしゃする。
今夜は誰か暇かな。