御曹司の秘書さんの日常◆

あれから、昴は呆然と社長を見送った後、
武に向き直って、珍しく笑いもせず。

「武。申し訳ない。」

とだけつぶやいた。


「…昴さま。いかがなさるおつもりでしょうか?」

「--んーーまぁ。
 大丈夫。どうにかなるよ?」

いつもの軽い調子で、ニヤリと笑った。
その笑顔が武の神経を逆なでする。

「--!」

「市川。すぐに10時から会議だろう?
 早くいくぞ。」

一言、文句を言おうと武が息を吸った瞬間、
昴は素早く仕事モードに切り替わって、
武に指示を出した。


「・・・・ちっ・・・」
武は小さく舌打ちをする。

確かに、こんなことで言い争っている時間はない。
こう見えても、常務の昴のスケジュールは今日も埋まっている。


「…昴様。会議の前に、この書類に目を通してーーー」

いろいろ言いたいことをかみ殺して、
武は通常業務に専念することにした。


あー。むしゃくしゃする。
今夜は誰か暇かな。

< 73 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop