御曹司の秘書さんの日常◆
昴は、素早くネクタイを外しながら
部屋の奥に備え付けられている、メイクルームへと進む。
「--とりあえず、
行くぞ。」
ちっ。
そうだーーこんなクダラナイ言い争いをしている場合じゃない。
今からーー
記念式典も兼ねたパーティがあるんだ。
常務室には奥に3畳ほどのスペースがあり、
カーテンで仕切られた簡単なメイクルームになっている。
と言っても数点の着替えと洗面所とドレッサーがあるだけだが。
急な冠婚葬祭や、食事会・パーティにすぐに対応できる。
「よし、市川行くぞ?」
「…はい。昴様。」
出てきた昴は先ほどと違い、
柔らかそうな髪を流すようにセットして
タキシード風のセットアップにスカーフをさしていた。
「市川。--兄貴の…社長のことは、僕から言っておく。
迷惑をかけて、本当にすまない。」
「…わかりました。本当に迷惑です。」
ハッキリ言うと、昴がそうだよな~といって笑った。