御曹司の秘書さんの日常◆
オンオフスイッチ
***
次の日、武は想像以上に驚いた。
花京院昴は、
そつなく
就任の挨拶を終え、
引継ぎ業務をすべて終え、
今から任される投資、開発部門の体制を
さらりと変え、
多少の人事異動と、システム変更を追え
花京院が主催する昴のお披露目パーティへときた。
その間、
昴は、愛想笑いすらしなかった。
調子が狂う。
前日見せた、あの軽いノリはいったいなんだったのか。
「こちらは、僕の秘書の市川です。」
不意に紹介されて、武はハッとなり
あわてて、頭を下げる。
そして、出された名刺を交換する。
あぁ、あの銀行の取締役か。
「いやぁ、こんな立派な息子さんが入ってくれるなんて、
お兄さんもお父さんも安心だな。」
「いえいえ、僕のような若輩者はまだまだです。
秘書の市川がいないと何も出来ませんよ」
なんて、お世辞合戦がかれこれ
2時間近く繰り広げられている。
おかげで 武の名刺の在庫も残り少ないし、
持たされた名刺が
スーツの胸ポケットにあふれかえってる。