Apasionado!3~俺様社長様の甘い誘惑~
「あ、ママここだよね」
助手席に座っていた涼が窓の外を眺めていたかと思うと、いきなり大きな声で。
「おにいちゃん、なにがここなの?」
後部座席のチャイルドシートに座っている陽菜が
「ねえ、おにいちゃん」
「あのマンションだよ」
涼が指差したマンションは
「えぇ。涼よく覚えてたわね」
私達が前に住んでいたマンション。
「なに?あのマンションがどうしたの?」
陽菜も窓から眺めて
「ママ、おにいちゃん」
マンションの近くに車を止めて降り
「わぁ~たかいね~」
陽菜が見上げている。
そうよね、30階建てだもんね。
「ひな、ここにパパとママとぼくがすんでたんだ」
「えっ?ひなは」
「ひなはまだうまれてなかったからすんでないよ」
「ママ」
「うん。陽菜はまだママのお腹にいた時には住んでたわよ」
「わぁ~い。ひなもしゅんでたんだ。 おにいちゃん」
「すんでたってうまれてなかったじゃないか。ぼくはうまれてたもん。このマンションのえっと…ママなんがい だったっけ?」
「27階」
「そうだ!27かいだ。ベランダからはなびだってみれたんだから」
「1、2、3、4、5…」
陽菜が指を折りながら数えている。
「…26、27!しゅごいね。ひなもみたいなはなび」
「ヘヘヘ…ぼくはみたもん」
「おにいちゃんじゅるい」
「ずるいったってひなはうまれてなかったんだから」
「じゅるい」
「ずるくない」
あ~ぁ、また始まった。
「喧嘩はしないの。さ、もう帰るわよ。パパも帰ってくる時間だし」
「はぁ~い」
今日は土曜日
恭介さんは誠さん達とゴルフ。
涼の野球の練習終わりに迎えに行って買い物をして帰る道に久しぶりにマンション前を通った。