無口彼氏と遠恋中
「もうそっちの生活には慣れた?」
《…まぁ、普通》
「そっかぁ~。…あ。いつか、あたしにも真琴の歌聞かせてね?」
《は?ぜってー嫌》
うわ即答。いいなぁー、会社の人達。
真琴の歌聞けるなんて天国じゃん。
「あたしはいつでも真琴に愛の歌を捧げるからね♪」
《お気遣いなく》
「ちょっ…ヒドッ!」
なんて、下らないけど幸せな言い合いをしていたら。
《坂下くーん?こっち来て歌おうよー!》
……聞こえた。聞こえてしまった。
真琴を呼ぶ、女の人の声。
《今行くよ!じゃあなみみ、切るから》
「えっあっ…マコ…」
――――プツッ。ツー…ツー…
悲しい音を残して、途絶えた電話。
あたしは呆然と、携帯を見つめていた。