その手の中に
涙
「ぅ……あ…うあぁぁぁ…!」
男は泣き崩れた。
俺にはなにが起きたのかよくわからない。
(なんで…泣いてんだ?泣きたいのは…こっちだってのに。)
男はポタポタと床にシミをつくっていく。
「うぁあああぁ…」
「…おっさ…ん…?」
俺は思わず声をかける。
人の心配してる場合じゃないのに
なぜだか放っておけなかった。
「なんで…?なく…の?」
もちろん
俺の体はもう限界がきていて
すぐにでも倒れそうだった。
だからかもしれない。
俺はおもった。
どうせもう美桜には会えないなら
もう美桜を守る体がなくなるなら
せめて…
もうこの人が
美桜を……
そして
ほかの誰かを傷つけなくなるように
手を差しのべることくらいなら
できるんじゃないかって。
これが
俺の最後の
望みであり
俺にしかできない
使命なんだと。