卒業 ―ずっと、一緒だよ―
「ねぇ? 理緒。」

呆然とする私の腕を、阿美は自分に強く引き寄せた。
痛い。思わず顔をしかめる。

「ほら、取ってきなよ。」

莉絵は、頷いた。
非常階段を、足音が駆け下りていく。

やがて校庭に莉絵の姿が見えた。
莉絵は、私のペンケースを取り、非常階段へと駆け戻った。

足音が近づき、莉絵の姿が見えた。
荒い息をしている莉絵。

莉絵は、ペンケースを私に差し出した。
恐る恐るそれに手を伸ばす私の横で、阿美はまた、私のカバンから何かを取り出した。

「――これは、何かな?」

それは、私のお財布だった。
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