日だまりの園
両思いになって一月、私達は良好な関係を築いていた。
「ジャム取って♪ 」
彼はトーストをオーブンから出し、オリジナルな方法で食べるのを知った。
「イチゴとオレンジ、どっち? 」
両方、言われた通り渡し鼻唄交じりに調理し始める彼。
「〜♪ 」
この一月の間に、私達はお互いのことを沢山知った。
例えば、彼は朝牛乳を飲むとお腹を壊すこと。
例えば、彼はクラシックを好んで就寝前には必ずクラシックを聞いていること。
例えば、彼は絵を描くのが得意なこと・・・
様々なことを知り、更に彼が好きになった。
……ただ、一月経った今でもわからないことがある。
幼い頃、私と離れた彼は何処に居たのか。
なぜあの会社に居たのか。
なぜ、私との約束を覚えていたのか……
知りたい。、と願えば願う程自分が我儘になって行くのがわかる。
「……はい、きみ……さくの分」
物思いに耽っていると、突然パンを差し出された。
「え……? 」
呆けたように呟くと、さくのだよ、と今度ははっきり言った。
「わ、私の? 」
よくよく見ると、それは彼がさっき作っていたオリジナルトーストだった。
「・・・今日は天気がいいから、ピクニックに行こう」
あの丘へ、目だけで言われ私は頬を緩めた。