運命‐サダメ‐
そのとたん、彼が目を開けて呟く。
だけどそれは、とても弱々しい声だった。
「大丈夫ですか?
今、救急車が来るからっ」
慌てている私に、彼は全然違うことを呟いた。
「初めて、名前、呼ばれた、な……」
そう言って、微かに微笑んだ気がした。
息も切れ切れで、話すのも辛そうなのに、出た言葉はそんなこと。
確かに、彼の言う通りで、呼んだ覚えがない。
特に理由があった訳ではないけれど。
だけど今、そんなこと言わなくても。