運命‐サダメ‐
詳しいことは、分からない。
だけど、憔悴している千紗姉を見れば分かる。
どんな形であれ、千紗姉はあの人が好きだった。
それは、間違いない。
だったら、あの人の忘れ形見を死なせてはいけない。
この赤ちゃんが唯一、千紗姉の生きる希望になるから。
「千紗姉と赤ちゃんを死なせないで下さい」
あたしは、頭を下げて医師にお願いした。
あたしの様子から悟ったのか、隣でお母さんも頭を下げていた。
それに対し、医師も力強く頷き、闘いが始まった。