運命‐サダメ‐



その顔は、どこかで見たような顔だった。


女性1人と談笑しながら、キスをしている横顔。


どこかで……。




「さあ、帰ろう」




いつの間にか、彼は戻って来ていた。


そしてまた、私の手を握り、歩き出す。



その時になって気付いた。

自分の手が震えていることに。


何もしていないのに、手が震えている。


彼もそれに気付いたらしく、私を抱きしめた。




「千紗は何もしていない。
だから、怖がる必要なんてない」




低く静かに言った。




< 43 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop