運命‐サダメ‐
その顔は、どこかで見たような顔だった。
女性1人と談笑しながら、キスをしている横顔。
どこかで……。
「さあ、帰ろう」
いつの間にか、彼は戻って来ていた。
そしてまた、私の手を握り、歩き出す。
その時になって気付いた。
自分の手が震えていることに。
何もしていないのに、手が震えている。
彼もそれに気付いたらしく、私を抱きしめた。
「千紗は何もしていない。
だから、怖がる必要なんてない」
低く静かに言った。