社長と刺激的な生活
この何の変哲もない出納帳をつける事が
今の私に唯一出来る事だから。
ぶ厚い出納帳を指先でなぞり、深いため息を零す。
少し窓の外が暗くなって来た頃。
―――――コンコンッ。
「はい」
カチャッ―――――。
「失礼します。オーナー、そろそろお時間です」
「ありがとう。じゃあ、後の事はお願いします」
「了解です。お気をつけて…お疲れ様でした」
「お疲れ様…」
私は机の上を片付けて、薄手のジャケットを羽織る。
大きな窓のロールスクリーンを下ろして、事務所を後に。
「お先に~」
「お疲れ様で~す」
店内にいるスタッフに声を掛け、
裏口から店の外へ出た。
11月の上旬のオフィス街は、
少し乾いた空気が吹き抜けて
暖かかった店から出て来た私の身体は
ひんやりとした涼しさを感じた。