社長と刺激的な生活
もし俺が独身で、この目の前の女とまだ関係を持っているなら…
少なからず仕事を回したり、何かしら助けただろうが。
けれど、今はそう簡単に助けられる立場にない。
「どしても……無理ですか?」
「悪いな」
女は涙目で聞いてくる。
昔の俺なら女の涙に揺さぶられる事もなかったが…
杏花と結婚してからは…
女の涙に弱くなったらしい。
今にも背中を擦ってやりたくなる。
俺も人間だ。
目の前の現実に心が揺るぎそうになっている。
けれど、杏花の顔が浮かんで……。
やっぱり……無理だ。
「力になってやれなくて…すまない」
俺は心を鬼にして……断った。
すると、女は少し鋭い眼つきで…
「分かりました。お引止めしてすみません」
納得したのか分からないが、彼女は去って行った。
俺は彼女の眼つきが少し気にかかる。
何も…なければいいんだが……。