A quirk of fate
おばあちゃんは亡くなる直前に
私にネックレスをくれたの。
「優香。これはじいさんが結婚するときに
くれたネックレスだよ。
私にとってこれは命よりも大切なものでね。
優香が大きくなったとき渡そうと
思っていたんだよ。
「そんな大切なもの受け取れないよ!」
「いいんだよ。私ももう90だしのぅ。
この命もそう長くはない。
こうして生きて元気なうちに
渡しておきたいんだよ」
「ほんとにいいの?」
「いいんだよ。その代り優香が
もっと大きくなって大切な人ができた時
このネックレスをその人に渡しなさい」
「・・・わかった」
「じゃあもう遅いから寝なさい」
「はぁい。おやすみなさい」
「優香。早く大きくなって
素敵な女性になりなさいな」
「急にどーしたの?」
「言えるうちに言っておかないとね。
おやすみ、優香」
「おやすみなさい」
これが私たちの最後の会話になった。
まるでおばあちゃんは
もう自分が死んでしまうことを
分かっていたような喋り方だった。
おばあちゃんが亡くなって
自分をさらけ出せる所が
無くなって私は家を出た。
その頃から私は荒れだしたの。
いくらバイトをしていても一人で
食べていくことは難しかったから
体を売って生活していった。
どうせ父親にけがされてるんだから・・・。
そう思って男たちに
黙って抱かれるようになった。
男が果ててしまった後
私はいつもおばあちゃんがくれた
ネックレスを見て泣きじゃくった。
こんな生活を今までずっと送ってきた。
そう。
航生・・・あなたに会うまでは。