「五時二十七分」

「はあ?嘘だろう」
俺は念のため、自分のポケットから自分の携帯電話を取り出し確かめてみた。  

   五時二十七分。  

画面左上の時刻にはそう表示してある。

「おい。俺、ずっとここで寝ていたのかよ」  

俺は腕を使ってゆっくりと頭と身体を起こしながら言う。

「そうみたいね。しかも熟睡」  

 沙織は冷淡に早口で言った。

「ああ。何のために学校に来たんだよ」  


俺はため息混じりにそう言いながら後ろを振り向いた。振り向くと、何一つ顔のパーツを動かさないで無表情な、冷たい雰囲気を漂わせる沙織の顔が飛び込んで来た。

「おい。今日お前、どうしたんだよ?」  

「俺はまだ少し頭痛が残っていたが、優しく微笑んで見せた」

「昨日の夜、正也寝たでしょ?」  

沙織は全く表情を変えぬまま、俺の全てを見透かそうとしているかのような目でジッと俺を見つめた。

「え……寝た?何処で?」  

俺は沙織がたとえ見透かそうとしていても、それは不可能だと確信していた。

なぜなら、昨日の夜のことを全く覚えていないのだから。
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