小山の駅は二年ぶりだった。

しかし今の俺にそんな懐かしさに浸っている心の余裕はなかった。周囲の人の視線を気にしながら顔を見られないように俯きかげんに歩いて駅を出た。
 
駅の北口を出たロータリーに連絡した通り、黒のバイクの置いてある横でタバコを咥える高橋浩介がいた。

「おう。急に悪いな」
 
俺は軽く片手を上に挙げる。

「別に。でも久しぶりだなあ。高校三年の卒業式依頼だ。で、どうしたんだよ。急に俺の家に泊まりたいなんてさ」

 厳つい顔をしながら浩介は俺のことを怒っているのか心配しているのか、睨みつける。

「まあ、いろいろとあってな」
 
理由は説明できるはずもなかった。だからと言って、うまい偽りの理由も考えられなかった。

「そうか。よし。乗れよ」
 
そう言って、浩介は何も理由を追求せず、バイクの椅子のトランクからヘルメットを取り出し、俺に渡した。

「正也。まず何処に行く?パチンコか?」

 バイクにまたがり、浩介はエンジンを入れてけたたましく鳴らせる。
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