夢
私は胸の高鳴りを抑えながらラーメン屋の右端あった白色のエレベーターに乗り、「3」のボタンを押す。

エレベーターが動きを止め、ドアが開くと活気に溢れた声と薄暗い店内が目に飛び込んできた。

「いらっしゃいませ」
　

私がエレベーターから一歩出ると、威勢の良い声がし黒い頭巾とエプロンをした小柄な女の子が満弁の作り笑いで私に近づいてくる。

「一名様ですか？」

「ああ、いえあのう。今日団体で大学生のグループはありますか？」

「はい。少々お待ちください」

　そう言って女の子はレジの隣にあった帳面を見た。

「そうですね。一組だけございますね。あそこの席でございますね」

女の子は掌である方向を指す。

私はその指した方向へと足を進める。

団体は約二十人くらいで、周囲の人々など目にもくれず大盛り上がりを見せていた。私はその団体の一人一人の顔を慎重に見ていった。

しかし、あの男の顔はその団体の中にいくら探してもなかった。
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表紙・目次

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