夢

古い民家が密集している一方通行の細い道を抜けて、いつもの二車線の道路に出た。この道路を反対側に渡ってまっすぐに数メートル歩けば私のアパートが見えてくる。

私は反対側に渡るため信号機付きの横断歩道の前に立ち、車は一台も走り去る様子はなかったが念のため歩行者専用の信号が青色になるまで待ち、そして信号が変わると私はゆっくりと横断歩道を渡り始めた。

半分ほど横断歩道を渡った時であった。静寂な道路に左斜線から車のエンジン音が聞え、徐々に近づいてくる。

私は気にせずそのまま歩き続ける。しかし気配もなくエンジン音が近づいてくる。妙だと思い、私は左にゆっくりと顔を向ける。

その瞬間、車のライトが目に飛び込み思わず目を伏せた。

ドン！バシャン！！

何が起こったのかも認識できないまま、私は迫ってきた車に跳ね飛ばされ、その車のタイヤに身体を押し潰された。

道に放り投げられたように倒れこみ、身体じゅうあらゆるところから血が流れ出しスーツを赤く染めた。

朦朧とする意識の中で、私の目はあの全速力でぶつかって来た車が数メートル先で急停車するのを見つめていた。

車のドアが開き、中から運転手らしき人物が姿を現した。

長身にスキーンヘッドのこわおもての顔。まさか。私は自分を疑った。まさか。あれは夢の中の男、小林正也。