俺は腰をこの二階のアパートの廊下にベッタリとつけ、仰向けになった。

「おい。おい。君。君」
 
しばらく俺は寝ていたらしい。起きたそこには当たり前だがやはり、マンションの廊下で寝そべっていた小林正也という犯罪者であった。

「大丈夫?君?そんな所で寝ちゃって」
  
そこに寝ていて本当に心配そうな顔と、変人を見るような顔と複雑な顔をしながら管理人の宮本が俺を上から覗き込む。この様子から見ると、宮本は俺が横山誠をひき逃げした犯人だとは気が付いていないようだ。

「夢だったら、いいのにな」
 
俺は鼻で笑いながら呟く。

「え?」

 宮本が顔を近づけてもう一度訊こうとしたが、俺は宮本を無視して身体を起し、階段を降り横たわっていたバイクを起してまたがった。

「これが現実なら、それを受止めるしかない」
 

エンジンをかけ俺はアパートを後にした。そう、俺の向かう場所は一つしかなかった。

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