「俺は・・・・・・小林正也じゃないのか?それにここは日本じゃないのか?」
 
男は俺の頬に手を乗せたまま、瞬きもせず暫し固まった。そしてまた歯を出して微笑んだ。

「そうか。お前、夢を見ていたんだな。日本って所で生きる小林正也って奴の夢を。」
 夢。そうか。これは夢なのか?じゃあ、また目を瞑って寝ればまた元の現実に戻るのか?

「でも、どうしてそんな聞いたこともない土地の名前が出てきたんだろうな。俺たちはここの土地の名前もわからずに、ただ懸命に守っているのによ」
 
それにしても奇妙な夢だ。俺が戦争の真っ只中にある国にいる夢など。それに考えてみれば、夢の中で自分の意識がちゃんと持てている。

「まあ、いいや。ゆっくり休めよ。またちょくちょく顔出すからよ」
 
俺がその呼びかけに対して頷くと、男は来た時と同じ音を鳴らしながら俺のもとを去っていった。
 
また眠ればあまり戻りたくないが現実の俺に戻れる。
 俺は深呼吸をして目を瞑った。そして、俺は眠りにつく。

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