クーラーが送る風を身体で感じながら、私はふとさっきまでの夢を思い出す。

若い男の夢。

夢を見たのも久しぶりだし、ここまで鮮明に覚えている夢も珍しい。小林正也。男。自分が通う学校から三分で通えるアパートに下宿する学生。不思議な夢である。まるで自分が正也と言う若い男の身体の中に一瞬、入り込んだかのように若い男の全てを知っている。


 しかし、私がそれをコントロールすることはできない。
  
         若い男が受動的に動く。

 それは映画館で主人公の顔がスクリーンに映し出されない、映画を見ているかのように。

 私は結局、そのまま一睡もできずにいつもの起床時間を迎えることになった。
寝不足なのだろうか、頭の中に霧が発生しているかのようにモヤモヤとして頭が回転しない。そんな中、スーツに着替え、出勤した。
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