仕事はいつも通り苦痛の連続であった。調子が悪くてもなんでも、ひっきりなしに掛かって来る電話。顔の見えない相手から容赦なしに注文や質問、苦情の電話線を通じて飛び込み、私はそれを一字一句聞き間違えることなく聞き取りそれに対して正確にそして素早く応対しなくてはならない。

 この電話受付の仕事を始めてから数十年、未だに私は職を選択した事の後悔は消えていなかった。

 人と話すのが得意ではない自分が、顔も見えない相手と会話をすることなど初めから無理なことだったのだ。



 しかし就職難と言われる今、たとえ自分に合わない職であっても職につけているだけ幸せだと思わなければならないのだろうか。
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