フレーム·イン《密フェチ》
それよりも先に。


「うおっと!」


長い手が伸びて、私の色気ないボールペンに触れた。
いや、私の指先に触れた。
突然のことに、反射的に手を引っ込めてしまった私。
彼はそんな私の様子に微塵も気づかず、ボールペンを掌に乗せてくれた。


「どうぞ」


腰を屈めた彼と、フレーム越しに目が合う。
自然と上目遣いをされる形になって、その長い睫を上から見下ろす。
――こんな顔、知らない。
だってこいつはいつも私に叱られて、私を頼っていて。
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