クッキーと花びら【短編】
*送別会
正式に、転勤のメンバーが発表された。



 『天野慎吾』



掲示板に張り出された、彼の名前をジッと見つめてしまう。






送別会でも、私は泣かなかった。



彼への気持ちは、胸の一番奥の奥にしまい込んで、鍵をかけた。





二次会へ向かう途中、みんなで桜並木を歩いた。



急に暖かくなったせいで、桜はもう八分咲だった。





「木村さん、これあげます!」



送別会で貰った花束を、私に差し出す天野くん。




「でも、天野くんが貰ったんでしょ?」



「もうすぐ引っ越しますから。 枯らしちゃうのも悪いんで。
木村さんの所で、綺麗に咲かせて下さい。」



そう言って、ニッコリ笑う。



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