雨あがりの空に
「…ねぇ、裕也…」

「…ん?どした?」

翠は、俺の服をそっと掴んだ。


「……ずっと…見ていたいな……」

「…え?」

「……ぅうん。何でもない…」


翠は、そう言うと…拓海のところに駆け寄った。


「…拓海~!凄く速かったよっ!」

「本当!?僕、速かった?」

「うんっ!もちろんっ!」

「ねぇ、ママ!お砂遊びしよっ!」

「いいよ~!」





確かに聞こえていた。

翠の声は…はっきりと俺に届いていた。



……ずっと…見ていたいな……




翠の…正直な気持ちなのかもしれない。

翠は…俺に助けを求めているのに……俺は、俺は……何もしてやれない。




「パパ~!!」

遠くから聞こえる拓海の声に、顔を上げる。


「パパも一緒に遊ぼうよ~!!」

「そうだよ~!裕也も遊ぼうよっ!」


翠も笑顔でそう言ってきた。
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