雨あがりの空に

月明かり

「…拓海…寝ちゃったな……」

「…うん」


今は、夜の10時。

拓海は、スヤスヤと眠っていた。

正直、俺も眠かった。久しぶりに走ったり遊んだりしたから、少しだけ疲れている。


「…翠は、眠くないのか?」

「…私は、大丈夫だよ…何だか眠るのも…もったいなくて…」

「…そうか…」


翠は、拓海の頭を優しく撫でた。


「…裕也…私……元気になれるのかな?……」

「…何言ってんだよ?当たり前だろ?…お前の病気は必ず治る」

「…………」


翠は、何も言わずに…拓海からもらった、お守りをギュッと握り締めた。


「……本当はね……私、死にたくない……」


ポタッ……。


一筋の涙が零れた。


「…ッ…翠?」

電気のついていない部屋の中では、翠の表情が、あまりよく見えない。

だけど、月明かりで見えた翠の表情は…涙を零していて、辛そうに顔を歪めていた。
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