雨あがりの空に
「…翠ね…裕也くんと拓ちゃんと、居られる時間を何よりも楽しみにしてるの…あの子、自分が病気になって…今まで必死に頑張ってきたことを手放して全てを犠牲にした…。もう、あの子は字を書くことさえできないの…」

「…え?」

「…病気が、かなり進行しているから…もう手の施しようもないから…それを翠に伝えたらね…ッ…グスッ…私、泣かないよ。最初から決まっていた運命なら私は受け止める。これからの時間は、裕也と拓海に使って二人に恩返しをしたい。…そう言っていたの……あの子は、あなたのことを凄く凄く大切に思っているの……」

「…ッ…俺もです……俺も…翠のことが凄く…大切なんです…」

「……ッ…グスッ…知ってるわよ。…あなたが翠のことを大切に思ってくれていること……痛いほど、伝わってる。……だから、最後まで翠の側に居てあげてほしいの…」

「……当たり前じゃないですか…誰になんと言われようと…俺は、翠の側にずっと居ます」



俺にとって、翠は…かけがえないのない存在なんだ。

だから、神様。


お願いです。翠を連れて行かないで下さい。


翠は、こんなにも生きたがっているんです。


俺にどんな辛い試練を与えても構わない。

だけど…翠だけは連れて行かないで下さい。











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