雨あがりの空に
翠が残したもの
その二日後…。
翠のお葬式が営まれた。
たくさんの人が涙を流した。
翠は、こんなにも…たくさんの人から思われていたんだ。
「…裕也くん、拓ちゃん…あなたたちが、これで最後よ?…翠にさよならを言ってあげて?」
ハンカチで口元を押さえながら、七恵さんは言った。
俺には、分かった。七恵さんは…涙を必死に堪えているんだ。
「…拓海…ママに会いに行こう…」
俺は、拓海の手を引いた。
棺の中の、翠は…綺麗な程、白い顔をしていた。
たくさんの花々に囲まれながら、翠は穏やかな表情で眠っていた。
「……ママ?」
「…そうだよ…ッ…ママだよ…」
「……ママ…?…僕だよ?…僕の声、聞こえる?……ママぁ…約束してたじゃん…ッ…ずっと一緒に居ようねって……ママぁ…僕、ママが大好きだよぉ?…僕の…こと…忘れないでね…ずっ、と……うぇぇ…ママ~…」
「…クッ…たく、み…」
「…ママ…が、…居なくなっちゃう…うぇ…やだよぉ…ふぇ…」
「…グスッ…拓海、泣いちゃダメだ…ちゃんと笑え…ママは、拓海の笑顔が好きなんだぞ?」
俺は、拓海の頭を撫でた。
「……ッ…ママ…大好きだよ…ママのこと…忘れないからね…」
…拓海は、笑った。
翠に最後の別れを告げた。