Per Fumum~元カレの香り~

ロッカーに手をかけると、背後からふんわりと漂うムスクの香り。


懐かしい……。


胸がつまった次の瞬間。大きな手が私のウエストに周った。

そして首元とシャツの隙間に、課長のすっと通った鼻筋が押し付けられる。



「あっ……」



吐息が肌の上を滑る。



「や、やめて、くださいっ……私たちもう、そんな……」



そう。課長と私は、実は昔付き合っていた。


別れた理由は、彼の突然の海外赴任。

付いて来てほしいって言われるかと思っていたら、言われなかった。

それで私は彼を諦めた。待ち続けることが怖くて、逃げた……。



彼は2年で戻ってきて、課長に抜擢され、今じゃ社内のエースだ。




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