魅惑の香り【密フェチ】
魅惑の香り
御盆前の金曜日、職場では暑気払いと称した飲み会が開かれた。
憧れの主任も参加するということで楽しみにしていのだが、席が離れてしまい、結局話は出来なかった。
肩を落としながら乗り込んだ満員の最終電車。酔いで気だるくなった身体は、簡単に乗客の波に飲まれて、いつの間にか奥へと流されていた。
だが、行きついた先で一気に酔いが覚める。
「しゅ、主任!」
目の前には憧れの主任がいた。彼は私に気付くと「お疲れ」と、優しく微笑んでくれた。
同じ電車だとわかっていたけど、まさか一緒の車両で会えるなんて。
思わぬ偶然に心は弾んだが、満員電車じゃ色っぽい会話の一つもできやしない。
しかも後ろから人に押され、お互いに身体が触れ合いそうな距離まで近づいてしまう。
私の顔は、丁度主任の肩と首の間にあり、短く切られた襟足が視界に入った。
なんとか抱きついてしまわぬよう、バランスを保っていた……が。
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