魅惑の香り【密フェチ】
「きゃっ」
ホームに着いた電車は新たな客を迎え、後ろの人に押された私は主任の広い胸に飛び込んでしまった。
「す、すみません!」
慌てて身体を離そうとしたが、人混みに圧迫されて身動きがとれない。
「いや、いいよ。それより悪いな、汗臭くて」
主任は自分自身に舌打ちをしながら謝ってくれた。
汗臭くなんてないのに。
むしろ――。
私は目蓋を閉じて、ゆっくりと息を吸い込む。
主任の耳の後ろから香る、甘ったるいような、優しいような……引き寄せられる魅惑的な香りが鼻腔をくすぐった。
その香りは媚薬のように私の身体を熱くし、脳を蕩けさせる。
この香りが汗臭い? そんなわけがない。主任の香りは、すごく濃密で――。