光の旅人
私の名前
私の名前は、お母さんがつけてくれました。

私を産むために、命を落とした人。命を懸けて、私の命を繋いでくれた人。

私の命は、お母さんの命の上で、今日も動いています。
だから、私の命は、お母さんの命です。


小さい頃は、同じくらいの年の子たちとよく喧嘩をしてました。お母さんがいないことを悪く言うんですもの。ちょっと頭にきて言い返してやったら、どんどんことが大きくなって、お互いに泣き始めちゃって、近くにいた大人の人に宥められて、というのを飽きもせず、繰り返していました。

でも次第に、言い返す気力もなくなって、喧嘩してくれる相手もいなくなりました。

友達は、いませんでした。

人前では、決してそんなことはありませんでしが、夜、お父さんにばれないように、しくしく泣くこともよくありました。


「何で私だけお母さんがいないんだろう。」

もちろんそんなこと分かっていました。お母さんは私を守って命を落としたこと、お父さんから何度も何度も聞いていましたから。

「何で私がこんな目に会わなくちゃいけないのだろう。」

それも、何となく分かっていました。人は自分より弱いものを見つけて攻撃することで、自分に安心できること、これよりマシだって思えることが、人間の防衛術なんだと、幼心ながらに学んでいました。

頭では分かっていました。でも、納得するには、私は幼すぎました。
私は不幸なんだって、そんなこと思いたくなかったけど、どうしてもその思いは拭えませんでした。


旅を続けました。
人と出会いました。時間が経ちました。


成長していくにつれ、自分は特別なんかじゃないんだということを学びました。旅をして、もっとつらい思いをしている人々と出会ったのです。

ある人は病に倒れ、ある人は目を、耳を侵され

ある人は、家族をみんな失っていました。

それでも、強く懸命に生きている人々が、たくさんいたのです。

強く、凛と咲く百合の花のように。


百合は、お母さんの好きな花でした。咲いている地域は、ごく僅かでしたが、たまにその花を見つけると、お母さんは子供のように喜んだんだそうです。



清らかに、美しく、そして強く

それを見るもの皆が笑顔になれるような

そんな人になりたいと、いつしか思うようになりました。

お母さんもそう願っていたのでしょう。不思議と確信があります。





私の名前はユリ。
純白の花の名前です。
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