光の旅人
テントを張り終わって、まだ宴まで、だいぶ時間がありました。なので、私はいつものように散歩に出かけました。
陽射しは強いのですが、木陰に入ると、そよ風が冷たくて気持ちいいです。ちろちろという音が聞こえます。近くに小川でもあるのでしょうか。
ふと、ある人を見ました。座って何やら手を動かしています。男性のようです。
「絵…かしら。」
そっと近くに行って見てみました。やはり絵を描いているようです。
「おや、誰かいるのかい?」
ふいに、その方が私に声をかけました。その声は低く、ですが柔らかで、優しい響きでした。お父さんの声と少し似ています。
立ち上がり、こちらを振り返りました。
すらっと背が高く、端正な顔立ちをしています。これなら誰もが美男子と認めるでしょう。
いや、そんなことよりも、私は彼の目をじっと見ていました。違和感があるのです。こちらを向いているのですが、どこか焦点のあっていないような遠い目をしています。
「あぁ、すいません、勝手に見てしまって…」
すこしたじろいで、私はそう言いました。
「いや、構わないんだ。えっと、光の旅人の子かな?」
「はい、そうです!ユリっていいます!」
「ユリ…か、いい名前だね。私はクザ、よろしく。」
クザさんは手を差し出してくれました。握手をして、クザさんの目を見ました。
やっぱり、この方は…
「あの…クザさんは画家なんですか?」
「あぁ、ちょっと前まではね…私の目が気になるかい?」
「あっ、いえ、すみません…失礼なことを…」
「はは、いや、いいんだ。気にしないでくれ。
ちょっと前に大きな病をやってしまってね、体はもう治ったんだが、後遺症で目をやってしまったんだ。もう、何にも見えないんだよ。」
最初、自分の目が見えなくなったと気付いた時は、何日も何日も、泣き続けたそうです。きれいな風景を見るのが好きで、人々の生活を見るのが好きで、絵を描くのが大好きだったのに、もうそれができないと分かってしまったから。以前は画家として生計をたてて暮らしていたそうですが、今は周りの村民の方々が食料を分けてくれたりして、それで何とか生活しているとのことでした。
陽射しは強いのですが、木陰に入ると、そよ風が冷たくて気持ちいいです。ちろちろという音が聞こえます。近くに小川でもあるのでしょうか。
ふと、ある人を見ました。座って何やら手を動かしています。男性のようです。
「絵…かしら。」
そっと近くに行って見てみました。やはり絵を描いているようです。
「おや、誰かいるのかい?」
ふいに、その方が私に声をかけました。その声は低く、ですが柔らかで、優しい響きでした。お父さんの声と少し似ています。
立ち上がり、こちらを振り返りました。
すらっと背が高く、端正な顔立ちをしています。これなら誰もが美男子と認めるでしょう。
いや、そんなことよりも、私は彼の目をじっと見ていました。違和感があるのです。こちらを向いているのですが、どこか焦点のあっていないような遠い目をしています。
「あぁ、すいません、勝手に見てしまって…」
すこしたじろいで、私はそう言いました。
「いや、構わないんだ。えっと、光の旅人の子かな?」
「はい、そうです!ユリっていいます!」
「ユリ…か、いい名前だね。私はクザ、よろしく。」
クザさんは手を差し出してくれました。握手をして、クザさんの目を見ました。
やっぱり、この方は…
「あの…クザさんは画家なんですか?」
「あぁ、ちょっと前まではね…私の目が気になるかい?」
「あっ、いえ、すみません…失礼なことを…」
「はは、いや、いいんだ。気にしないでくれ。
ちょっと前に大きな病をやってしまってね、体はもう治ったんだが、後遺症で目をやってしまったんだ。もう、何にも見えないんだよ。」
最初、自分の目が見えなくなったと気付いた時は、何日も何日も、泣き続けたそうです。きれいな風景を見るのが好きで、人々の生活を見るのが好きで、絵を描くのが大好きだったのに、もうそれができないと分かってしまったから。以前は画家として生計をたてて暮らしていたそうですが、今は周りの村民の方々が食料を分けてくれたりして、それで何とか生活しているとのことでした。