光の旅人
クザさんに呼ばれて、私は別の部屋に通されてました。

「ここは…？あ、この絵は…」

先ほど外で彼が描いていた絵がありました。他にも十枚ほど、絵がかかっていました。

「ここには、目が見えなくなってから描いた絵を保管してある。良ければこちらも見ていってくれ。」


目を疑いました。

「絵が…光ってる。」

もちろん、そう見えただけでしょう。しかし、先ほどの部屋にあった絵よりもはるかに強い光が宿っているのを感じました。

きっと、クザさんの希望がすべて込められているのでしょう。

さらに驚いたことに、よく見てみると、絵を描いた順番が分かるのです。
つまり、上達していっているのです。彼が視力を失ってから、光の無い世界で描いた絵が、枚数を重ねるごとに、より正確さと、緻密さを備えて、さらに表現の幅も広がっていくのが、明らかに分かるのです。


なんて、なんてすごい人なのでしょうか。

なぜ、諦めずに、戦い続けることができるのでしょうか。



目の見えない人の描いた世界が

なぜこんなにも、人の心を打つのでしょうか。



気づけば、私は泣いていました。

風が、部屋を駆けていきました。
< 16 / 33 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop