光の旅人
街は静かです。さっきまでの賑やかさはどこへ行ったのでしょうか。

光の中でしか歩けない私と、この街を出れない彼は、それぞれの知らない世界に思いを馳せます。もどかしくて、もどかしくてしょうがないのです。

本当に、気が狂うくらい、世界が遠いのです。




クルドが突然言いました。

「ねぇ、ユリ。逃げ出さないか?」


突然、でした。風が吹いて、光の粉が降ってきます。

「え?どういう…」

私は驚いて言いました。

「今からここを抜け出すんだ。僕はこの街から、君はオーロラの光から。

満足してないんだろ?見たいものがあるんだろ?


一緒に行こう。」



私は頷きました。不思議なことに、こうなることが分かっていたような気がします。疑問なんて、不安なんてありませんでした。


私は、旅人ですもの。




クルドは立ち上がり、歩き出しました。迷わず、街の出口へ。
私もその後を追います。



出口付近に来て、私は振り返りました。お父さんのことが、唯一気がかりでした。
しかし、すぐ歩き出します。ここで戻ったら、ずっと変われないと思ったのです。




私たちは、街を出ました。

光の無いこの地面は、すべてが道なんだと思いました。
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