光の旅人
「でもクルドはきっとここへは来ないだろ?」

ご名答。やっと施設を出たのにわざわざまたこんな所へ遊びに来る奴の気がしれない。

「はは、そうだな。でもお前とはまた会いたいな。」

これは本当だ。カリムは年が2つ下で、明るくて頭が切れて、優しい。決して美男子ではないのだが、何だか人を惹きつける魅力があって、下の子たちからの人望も厚い。
何より、勇敢で友達思いで、いい奴だ。


「カリムは将来どうするんだ?まさかここで働くわけじゃないだろう?」

「うん…まだ何も考えてないけど…とりあえずこの街を出たいかな。」

「え!街を出るのか?そっちの方がよっぽど寂しい話じゃないか。」

「まぁそうなんだけどね。でも、ここにいたらどんどん自分が小さくなっていく気がしてならないんだよ。なんていうんだろう…自分の中のエネルギーが抜けいっちゃうような気がしてさ。大人になる頃には萎んでしわくちゃになっちゃうんじゃいかって思うと、怖いんだ。

街を出てさ、色んなものを見たり聞いたりして、そしてそれを色んな人に伝えたいんだ。僕たちみたいな連中にさ。」


「小説を書いて売り歩くんだろ?」


彼は小説家になるのが夢だった。昔から彼は話が上手くて、文章にして紙に書くと、さらにその才能は際立った。たぶん彼は、自分の野望を成し遂げる人間なんだなと、僕は勝手に思っていた。

「そんな話よく覚えてたな!そうだよ。クルドには歌があるように、僕には文章がある。今に大作家になってやるさ!

クルドも音楽をやればいいのに。クルドはすごく歌が上手いから、きっといいヴォーカルになるってみんな言ってるよ。」

「そんな器じゃないよ。それに、いいヴォーカルったって、この街には腐るほどいるしな。

僕は、この街で静かに生きるのがお似合いさ。」


半ば自分に言い聞かせるように、僕は言った。言った後で少し悲しくなる。カリムが悲しそうな顔をするからだ。



孤児院にいる子供は、街に出ると、同情か軽蔑しかされない。仕事を探しに、街へ初めて行ったときは驚いた。みんなこっちをじろじろ見てくる、まるで病気の犬でも見るみたいに。

「孤児院のガキか」「ほっとけ、何されるか分からんぞ」

なんで分かったんだろうって思った。僕は一言も喋ってないのに。



「あぁ、そうか

服がぼろぼろなんだ」


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