光の旅人
夢は、終わりがあるから夢なのだ。


毎晩の宴以外の時間は、退屈だ。儀式をして、掃除をして、飯を食べて、あとは部屋で大人しくしている。仕事探し以外での外出は禁止されているから、気晴らしに外へ行くこともできない。
だからみんな、夜の宴を精一杯楽しむ。普段は厳しい職員の連中も、その時ばかりは目をつむる。

僕だってそうだ。歌うことが僕の唯一の生き甲斐だ。というより、歌っている時以外は、生きているという実感がしない。閉じ込められて、ただ目の前の時間を貪って、自分の未来を考えて、憂鬱になるだけだ。



四角い窓から見る世界が、こんなにも遠いなんて。



「カリムはすごいな…」
僕はぼそりと呟いた。

夢を語った彼の目に、迷いは一切無かった。きっと、本当に自分の言ったことが実現するんだって、信じているんだ。

彼はいつも自信に満ちた声で話し、目は輝いていて、いつも口元に笑みを含んでいた。彼が話すことは、すべてその通りになりそうな、何というか、真実味があった。何か嫌なことがあっても、冗談と一緒に笑い飛ばしてしまうし、逆境に負けないというか、むしろ逆境を楽しんでいるようにも見えた。でもちょっと抜けていて、洗濯物を干すのを忘れたり、時には夕食を忘れたりすることもあった。そんなところも、親しみやすさの一つの要因らしく、とにかくみんなから愛されている。彼がいると、その場が華やぐ。彼と居ると、みんな笑顔になる。



僕は、そんなカリムが羨ましかった。

何にも負けない、強さが欲しかった。



彼の目に、あの空はどう映るのだろうか。

僕が見てる空と、彼が見てる空は一緒なんだってこと

彼は信じてくれるだろうか。
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