光の旅人

カリムがここへ来たのは、僕が14歳の頃だった。だからカリムはその時まだ12歳。

今でも覚えてる。とても寒い冬の日だった。冷たい海の上に、雪がはらはらと降っていて、街は一面雪景色だった。




「クルド!!早く!この子を部屋へ!」

夜更け、この街で一番静かな時間に、院長の怒号が施設内に響き渡った。

「クロードさん?一体こんな時間にどう…」

一瞬息を呑み、体が硬直した。あまりに寒いからか、いや、そうじゃないな。

ごわごわのコートを着て、ますます化け物じみている院長の腕に、ひとりの少年が寒さに震えている。



血だらけだ。



今の僕らよりもひどい服のあちこちに血が滲んでいて、特に右肩と左腿からの出血がひどいようだ。


血が滴っている。
血は凍らないのかな。


動転して、頭がぐわんぐわんしている。
こんなに血を流している人を初めて見た。情けないことに、僕は恐怖で震えていた。


院長の怒号がさらに響く。

「何をボケッとしているんだ!部屋に運ぶぞ!医者は読んである!

さぁ早く!」


「あぁ…」

怖くて、胸がどきどきして、お腹をぎゅうっと掴まれるような感覚になった。まともな返事もできず、僕はただ院長の指示に従って、一緒に彼を院長のベットの上に運んだ。



「急いで暖炉に火を。それから毛布をどこかの部屋から持ってきなさい、なるべくたくさんだ。」

僕は急いで薪をくべ、自分の部屋にすっ飛んで毛布を取ってきた。途中、騒ぎに目を覚ました子供たちに事情を説明し、毛布を集めるのを手伝ってもらった。


「持ってきました!」

「おぉ、バッチェスとリドか、ご苦労。君たちは部屋で休んでいなさい。後は私たちでなんとかするから。」

「でも…」

目の悪いリドが、サイズの合わないメガネを押さえながら言った。院長は手でそれを制し、「大丈夫だから」と優しく声をかけると、彼らは大人しく部屋に戻っていった。


応急処置を何とか施したが、右肩と左太腿の出血がひどい。真冬のこの時間に、汗を流しながら、傷の手当てをしている。程なくして、医者が到着し、何とか処置してもらった。


「もう大丈夫でしょう。応急処置が早くて助かった。あと少しでも遅れていたら危なかった。」

「そうですか、そいつは良かった。何よりだ。」

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