光の旅人
視界が逆さまになったり、戻ったり、耳がうわんうわんする中、それでも私は必死に釘を抜こうとしました。これさえ抜ければ、テントを畳むのは簡単なのです。

ぐっと力を込めました。

抜けそうな気がしてきました。

さらに力を込めました。

その瞬間、空がぱっと明るくなった気がしました。

すっと、釘は抜けました。

抜けたと同時に、空が優しい光で包まれました。風に吹かれたカーテンのように、ふわふわとした光の束が、私たちのところへ降りてきました。光の粒が、ゆらゆらと舞い上がり、地面に落ちてきます。地面にも、星空ができたみたいです。
目のチカチカも、頭と耳が痛いのも全部なくなりました。より鮮明に、より感動的に、オーロラの色彩は夜を染めていきます。

私は、この瞬間が好きなのです。私の世界が正常に戻って、波のようにオーロラの色が押し寄せてくる、まるでオーロラが私をもとの世界に引き戻してくれるみたいで、とても気分の良い瞬間です。



見ると、お父さんはすでにテントを畳んでバックにしまい込んでいました。他の人たちも、皆立ち上がり、同じ方向を向いていました。
オーロラの光に照らされて、一筋の道が大地に顕れています。


「さぁ、行こう。」
お父さんの声は、いつも優しいです。
私たちは、オーロラの光の中を歩き始めました。



オーロラの光は、他の世界から私たちを切り離すように、神々しい光を注いでいます。

「こっちの暗い方には、何があるんだろう。」

お父さんに言おうとして、やっぱりやめました。
< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop