雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
魔物の生贄
「ただの人間ならば、お前も苦しまずわたくしに従えたものを。しかし肉体という枷もまた、わたくしには好都合――」
帝釈天の身体が雷光を纏った瞬間、激しい落雷が目の前に立ち尽くすイシャナを襲った。
「ぐああっ!」
「イシャナーーーっ!」
落雷の衝撃で、一瞬にして辺りが白く染まる。
焼きついた視界が少しずつ視力を取り戻し、ようやく状況が見えはじめた月夜は、うずくまるイシャナに駆け寄った。
「イシャナ!」
動かない彼の顔を覗きこむと、その表情は恐怖に引き攣っていた。
身体がぶるぶると震えだし、息が乱れる。
月夜にも、イシャナに起きている異変が感じられた。
「は……離れて、下さい。俺……俺は……っ」
「しっかりしろ、イシャナ! お前はナーガの王だろう? こんなところで己を見失うな……お前は国のために、呪いを断ち切るためにここにいるのだろう!」
震える肩を揺さぶる月夜に、イシャナは弱々しく微笑んだ。
「はは……月夜……様はホンマ……一生懸命……けど、すんまへん……俺……多分、限界……うあ、ああっ!」
「イシャナっ!」
みるみるうちに、イシャナの身体が膨れていく。
筋肉が異常な速度で増殖し、手足がメキメキと音をたてる。
その口からは、耐えず気が狂いそうな悲鳴が漏れた。
「そんな……イシャナ……イシャナ! だめだ、魔物になどなっては……お前は……」
「うあっ、グォ……ぐ……つき……さま。逃げ……るんや! はよ……にげ……ぐはっ」
月夜はゆるゆると首を振りながら、変わり果てていくイシャナを見上げた。
かすみゆく意識の片隅で、必死に魔物の本能に抗う彼を、助けたくてもその術がわからず立ち尽くす。
帝釈天の身体が雷光を纏った瞬間、激しい落雷が目の前に立ち尽くすイシャナを襲った。
「ぐああっ!」
「イシャナーーーっ!」
落雷の衝撃で、一瞬にして辺りが白く染まる。
焼きついた視界が少しずつ視力を取り戻し、ようやく状況が見えはじめた月夜は、うずくまるイシャナに駆け寄った。
「イシャナ!」
動かない彼の顔を覗きこむと、その表情は恐怖に引き攣っていた。
身体がぶるぶると震えだし、息が乱れる。
月夜にも、イシャナに起きている異変が感じられた。
「は……離れて、下さい。俺……俺は……っ」
「しっかりしろ、イシャナ! お前はナーガの王だろう? こんなところで己を見失うな……お前は国のために、呪いを断ち切るためにここにいるのだろう!」
震える肩を揺さぶる月夜に、イシャナは弱々しく微笑んだ。
「はは……月夜……様はホンマ……一生懸命……けど、すんまへん……俺……多分、限界……うあ、ああっ!」
「イシャナっ!」
みるみるうちに、イシャナの身体が膨れていく。
筋肉が異常な速度で増殖し、手足がメキメキと音をたてる。
その口からは、耐えず気が狂いそうな悲鳴が漏れた。
「そんな……イシャナ……イシャナ! だめだ、魔物になどなっては……お前は……」
「うあっ、グォ……ぐ……つき……さま。逃げ……るんや! はよ……にげ……ぐはっ」
月夜はゆるゆると首を振りながら、変わり果てていくイシャナを見上げた。
かすみゆく意識の片隅で、必死に魔物の本能に抗う彼を、助けたくてもその術がわからず立ち尽くす。