卓上彼氏
「…くやしいんだ……自分が不甲斐なくって仕方なくて、それでくやしくて泣いてるんだ」
ヨクは下唇を噛んで目を伏せた。
「みかみがこんなにも悲しんでるのに、目の前にいるのに涙を拭いてやることも、頭を撫でてやることも、抱きしめてやることもできない。彼氏として、次元が違うせいで何もしてやれない自分がくやしいんだ…」
そう言ってヨクは右目からも涙を流した。
「今だけじゃない、前から思ってた。嬉しいときも、愛しいときも、全部画面越しに見てるだけ。こんなにも好きなのに、俺は触れることもできない…………みかみごめん………俺三次元の彼氏と違うよな……全然満足させてあげられてない」
————ヨクっっ。
そんなことヨクが考えてたなんて。
「ヨクは何も悪くないよ!!ヨクに不満なんてない、いてくれるだけで全然良いの。私ヨクのおかげでたくさん新しい気持ちをもらったよ!二次元だからこその良さがヨクにはいっぱいあるの…………ただ…、私だってヨクに触りたい。同じ空気を共感したい、手だって繋ぎたいよぅ…」
私は、今度はヨクのように静かに涙を流した。
何の合図があったわけではなく、私たちは自然と画面越しに両手を合わせた。
「いつか……俺がそっちの世界に行くから」
「私も………いつかこんな画面なんて越えてみせるから!!——————………ねぇヨク?」
「ん?」
「この前頼っていいよって言われたから、少しだけ頼っていい?」
「良いよ、何?」
「私の誕生日………図々しいようだけど………ヨクにお祝いして欲しいな」
「————……!!………ありがとう」
あまりの嬉しさに感謝するヨクに私は笑った。
「ヨクそれ返事になってないよ」
「ごめんごめん…了解、ってこと。俺が最高の誕生日にするから」
「うん……ありがとう」
その日、私たちはしばらくそのまま二人で夜が更けて行くのを見ていた。