卓上彼氏
午前中は私が前から行きたがってきた水族館を予定してくれていた。
ヨクは機械の中の人間だから、もちろん入館料は私1人で充分。
「高校生一人です」、そう言ったときのチケットカウンターのお姉さんの顔はいまだに忘れられない。
「水族館って、初めて見た」
希望していた私より、ヨクの方が興奮していた。
「そっか、ヨクは初めてだよね。………ヨクって私に出会ってからの記憶しかないの?」
「うん…。記憶は、ね。でも知識は元々備わってたみたいで、今みたいに日本語話せるし、水族館とか遊園地っていうものがどんなものなのかも知ってる」
私は大きな水槽の前で足を止めた。
静かなるその場所は、心なしか誰もいないように感じた。