卓上彼氏
タクシーは暗闇の中停車した。
車窓からはあまりよく外が見えない。
暗がりの中うっすら柵や建物のようなものが見えた。
廃墟…………?
良からぬ予想をしつつドアを開けようとすると、
「お嬢さん、運賃!」
とおじいさんに止められた。
―――あ、そっか。
「ごめん……これだけはみかみ持ちなんだ」
きまり悪そうにヨクは顔の前で手の平を合わせた。
「良いよ良いよ」
私は小声で返答すると、財布をカバンから取り出した。
「あぁちなみにね、お嬢さん電話で予約してくれたから三割引よ」
そう言っておじいさんはにっこり笑った。
ヨク…………私に払わせるっていったって結局なんだかんだ安いじゃない。
脱帽しすぎて半分わけのわからない微笑みを浮かべながら運賃を払うと、運転手さんにお礼を言ってタクシーを降りた。