卓上彼氏
……はよう…朝だよ……おはよう………起きて…
…?
ん…?誰……?
誰か私を起こしてくれてる……?
―――――そんなわけない。
だって私を起こしてくれるような人なんてこの家にはいないから。
私の父は三年前から仕事でロサンゼルスに単身赴任。
私を出産した後から体が弱くなった母は去年体調をくずしてそれからずっと入院生活。
年収のなかなか良い父が、
『四人で暮らそう』
そう言って買ったこのマンションの一室は、高校生一人には広過ぎた。
高校生独りの私の身を案じてすでに家庭に入っている歳の離れた姉が週一で様子を見に来てくれるけれど、子育てが忙しくて最近はあまり来なくなった。
ねぇ…みかみ起きてよ………遅刻しちゃうよ…?
その声は、まるで泣いている子供をあやすかのような甘い声で囁いた。
「ん……誰ぇ……?」
ゆっくりと体を起こすと、そこには誰もいなかった。
だだっ広い部屋のベッドに、私ただ一人。
…………?
デスクの上の時計を確認したとき、点きっぱなしのパソコンが目に入った。
昨日男性を描き上げた、あの画面のままだった。
あれ……?
確か昨日ちゃんと電源切ったはずだよね…………?
その時だった。
「起きてくれて良かった、おはよう、みかみ」
ディスプレイの青年が、そう言った。