卓上彼氏
暗さに目が慣れて、段々あたりの様子がわかってきた。
どうやら今は使われていない遊園地らしい。
「ヨク……どういうこと?」
私がそう言ったのが合図だったかのように、イキナリ園内全ての灯りが着いた。
黄金に光り輝くイルミネーションが私を包む。
目の前の大きなメリーゴーランドは豪華絢爛な装飾を輝かせて回っている。
誰もいない遊園地に、私とヨク、ただ二人だけ。
「綺麗……!!」
私は思わず口を両手で覆った。
それは、今まで見たどんな景色より美しく思えた。
「みかみ………お誕生日おめでとう」
ヨクは大人っぽい表情で笑ってみせた。
「ずっとこのサプライズ、してあげたかった」
ヨクはなんだか照れ臭そうに頭を掻いた。
「初めてデートに行ったとき、映画観てみかみがずっと羨ましがってたから」
「そんな些細なこと覚えててくれたの………?!」
どうしよう、泣きそう……!
あまりの嬉しさに私の目からは幸せの涙が溢れた。
「ははは泣くなって」
「だってっ……こんな幸せ者世界に私だけだよっ………私今……世界中で一番幸せ…!」
私はもう、どうしたらいいか分からないくらい嬉しかった。
誰かにこんなに思われて、こんなに愛されたことなんてなかった。
大好き、大好き。
ヨク、大好きだよ。
「この景色は、みかみだけのもの」
ヨクは真っ直ぐ私だけを見つめた。
そのまま私たちはおとぎ話のような光の世界で、キスをした。
そしてこの日は、私の中で一生忘れない特別な日になった。