卓上彼氏
やっぱり。
バイブを発動した張本人はヨクだった。
「ありがとう、どうやって切り抜けたらいいかわかんなかった…!」
私が感謝の言葉を述べると、
「そうじゃないよ、助けるために呼んだんじゃないんだ」
と、いつもより真剣な表情で彼は答えた。
「クリスマス、行っていいよ、俺のことは気にしないで」
「え……?」
まさか彼がそんなことを言うとは思わなかったから、唖然としてしまった。
ヨクの表情は、しぶしぶ、とか嫌々、という感じではなく、なんとも読めない雰囲気だった。
「何言ってんの!?クリスマスはヨクと過ごすよっ…!」
「俺……俺のせいでみかみ束縛するの嫌だし。それに、もう少し現実の男子も見た方がみかみのためだよ」
ヨクは、いつもとは違った、消極的な笑いをした。
「ヨク…何……言ってんの…?やだ、変なこと言わないでよ」
「俺となら他の日にでもクリスマスデートできるでしょ?なら、あっち優先してあげなよ」
そういう問題じゃないよ、
そう言おうとした時、私はヨクの表情に気付かされた。
彼は、本気だった。
これまで見たことないくらい、真剣な顔をしていた。
──────…これは、私がどうこう言っても変えられることじゃない。ヨクの中で決まった、変更不可なことなんだ。
『なんで?』とか、『どうして?』とか追及しても、なんだか私が惨めになるだけのような気がした。
これ以上何か言ってもダメだと思い、私は心を決めた。