卓上彼氏



夕方のショッピングモール。



平日のこの時間帯は主婦も夕飯の準備で帰宅し、店内はガラガラだった。




学校の帰り道に寄るのは、込みあっている休日に買い物に行くよりずっと良い。



私は目的もなくふらふらーっとウィンドウショッピングをしていた。





スポーツ用品店の前を通ったとき、バレーボール関連の商品が安売りしているのを目に留めた。





「ヨク、ちょっと寄るね」




私はいつものごとく胸元のヨクに話し掛けた。




何か掘り出し物は無いかと隈無く見た。




その中に、珍しく値下げされた新品のバレーボールを見つけた。



傷でもついて売れ残ってしまったのだろうか、いかにも買ってくれと言っているかのように一際目立って飾られていた。




クリスタルの土台にしゃんと乗せられたバレーボールを見て、私は藤堂くんの部屋にあったバレーボールを思い出した。





たくさん寄せ書きがしてあって、感謝の言葉で埋めつくされていた。



そんな幸せ者な彼を思い出して、思わず顔がほころぶ。





────そんな私を、ヨクは黙って見ていたような気がする。




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